なぜ豊かな現在に「貧困」が存在するのか?その1「雇用流動性」

ナビ部アラカルト

2016/09/18

もう一つの高校 その3

映画「Always三丁目の夕日」を見ると、昔の日本は本当に貧乏だったことがわかる。
しかし、当時は「将来の不安」におののく人は、今よりもはるかに少なかった。

 

50年前と比べれば、日本ははるかに豊かになったはずだ。

なのに、なぜ今「貧困」が存在するのか、そしてどんどん「貧困層」が増えているのか?

 

政治が悪いから?政府が悪いから?

いろんな意見があるだろうが、そんな単純な問題ではない。

 

社会が大きく変わってしまったのだ。そして社会を変えたのは主として「経済」だ。

 

「貧乏」だけど大きな希望があった時代から、豊かだけど未来が見えない「貧困」の時代へ、どのように移り変わっていったかを見ていこう。

護送船団方式

戦後の日本は、急速に経済発展した。これをリードしたのは国だ。国は、造船、建設、自動車、機械産業などの産業を重点的に支援し、そうした会社に資金が十分にいきわたるように銀行を指導した。大企業の方向性も国が指導した。これを「護送船団方式」という。

日本は、当時から世界一の経済大国だったアメリカに、大量に商品を売った。人件費が安く、品質も良い日本の製品はどんどん売れた。当時は、1ドル360円、1ドルでアメリカにものを売れば、日本円で360円になった。安い価格でモノを売っても、日本は儲かった。

 

終身雇用と年功序列

作れば物が売れる時代になったので、企業はどんどん人を雇い入れた。先週紹介した中卒集団就職の「金の卵」もそうした人々だ。

当時の企業は、人材を確保するため「終身雇用」が当たり前だった。一度会社に入れば、定年まで面倒を見てくれたのだ。「終身雇用」は日本企業の特色のように言われるが、戦前はあまりなかった。戦後、高度経済成長期になって定着した制度だ。

また「年功序列」も日本企業の特色だ。年齢、社歴が上の人のほうが給料が上という制度だ。これは、企業内での社員の行き過ぎた競争を抑え、みんなが力を合わせて会社を盛り立てようという気持ちにさせるためのやり方だった。

当時の会社は「家族」と言われた。みんな仲良く力を合わせて仕事をしていたのだ。

企業はどんどん業績を伸ばし、社員の給料も右肩上がりに上がっていった。家に「三種の神器(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)、3C(カラーテレビ、車、クーラー)が入り、生活水準も上がった。

貿易摩擦

こういう形で、日本の製品が世界中で販売されるようになると、他国から「何とかしないと」という声が上がる。

特にアメリカでは、自動車、家電などもともとアメリカが本家だった産業が、日本に負けてどんどん衰退し、大きな不満となった。「貿易摩擦」だ。

ついにアメリカは1973年、日本との為替を、固定相場制から変動相場制にした。これまで1ドル=360円と決まっていたものを、経済状況などによって変わるようにルールを変えたのだ。

これによってこれまで1ドルの商品をアメリカに売れば、360円になっていたものが、突然、300円を割り込むようになった(今は100円前後)。

日本の経済は大ショックを受けた。またこのころには、日本のサラリーマンの給料も上がって、安い価格で商品を作ることが難しくなった。

 

「日本の会社」が「国際企業」に

しかし日本は、ここから価格勝負ではなく、技術力や品質など、いろいろな長所を磨いて成長を続けた。日本企業の優秀さが世界に知られるようになったのはこのころからだ。

1ドル200円を割って、100円に近づいても日本は、企業努力によってモノを売り続けた。

しかし、20世紀の終わりになると、通信手段や物流が発展して、企業は国内ではなく、世界に目を向けるようになる。日本企業が世界に支社をだすようになり、外国人も雇い入れるようになる。「日本の会社」が「国際企業」になっていったのだ。

当然、アメリカなど海外の会社も日本でビジネスをするようになる。それとともに、日本独特の会社の仕組みが、変わらざるを得なくなった。

 

「従業員」よりも「資本家」を大切にする

日本の企業は「従業員」を重視するといわれる。「家族」のように社員を大事にし、その力を活かすことで成長してきた。

しかしアメリカの企業は「資本家」を重視する。「資本家」とは出資者、株主のことだ。会社の株を買い、配当を得る。会社がもうからないと「資本家」は、株を手放してしまう。だからアメリカの企業は「資本家」を大事にする。

国際化とともに、日本の会社も「従業員」よりも「資本家」を大切にするようになった。

「資本家」は、長期的な会社の成長ではなく「目先の配当」を重視する。日本のように従業員を大事にし、長く雇用するような仕組みは理解されにくい。

「こんなにたくさんの社員を雇う必要があるのか」

「できる人にもっと給料を払って、できない人は給料を安くしたらいい」

非正規雇用が増える

そんな声が「資本家」から出て、「終身雇用」「年功序列」は少しずつ崩れていった。

国もこうした「企業のグローバル化」を後押しするために雇用制度を改めて、企業がアルバイトやパートなど非正規社員を雇用しやすくした。

これまで通りのやり方では、国際経済に通用しないため、日本の会社は変わっていったのだ。

その結果、日本の企業は、正社員のほかに非正規雇用(契約社員、パート、アルバイトなど)でたくさんの人を雇うようになった。

非正規雇用の労働者は、正社員のように会社が一生面倒を見てくれるわけではない。

業績が悪くなったり、会社の方針が変われば会社を辞めなければならない。また給料も正社員のように高くはない。

さらに正社員も「終身雇用」とは限らなくなった。業績が悪ければ「リストラ」されるようになった。

「終身雇用」の時代なら一度会社に入れば一生大丈夫だったものが、今はそうではなくなった。そもそも正社員の募集が少なくなったので、高校、大学を出ても正社員になることができず、非正規雇用になることも多くなったのだ。

いつ首を切られるかわからない「非正規雇用」の労働者が増えたこと、そして正社員でもリストラされることが多くなったことで、多くの人が将来に不安を抱くようになった。これが現代の日本の「貧困」の大きな原因なのだ。

雇用流動性の問題

そういう雇用のスタイルが当たり前になっているアメリカでは、貧富の差が大きくなっている。日本もその後を追うように貧富の差が目立ち始めている。

ただ、アメリカと日本では異なる部分もある。

アメリカでは会社をリストラされても、他の企業に正社員として入社することは比較的簡単だ。アメリカの雇用制度では年齢制限はない。40歳になろうが、50歳になろうが、実力があると認められれば、企業に正社員として入ることができる。

しかし日本は「終身雇用」が崩壊しているにも関わらず、企業は、いまだに「新卒」「第二新卒」など若い人を正社員として雇用したがる。

中途入社は非正規雇用になることが多いため、リストラされた人は、今までと同じ仕事、給料を得ることが非常に難しいのが現状だ。

アメリカのように人々が企業を移動することが容易な社会を「雇用流動性が高い」社会という。

日本は、会社の仕組み、仕事の仕方が大きく変化したにも関わらず「雇用流動性が低い」のが大きな問題なのだ。

 

Crick

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