なぜ豊かな現在に「貧困」が存在するのか?その3「セーフティネットの危機」

ナビ部アラカルト

2016/10/02

もう一つの高校 その5

日本企業が在り方が変化して非正規雇用の人々が増えたことで「貧困」が生まれたこと、雇用流動性が低くなって一度会社を辞めた人はなかなか正社員になれなくなったこと、さらにその世代が子供を持つようになって「貧困の再生産」が生まれて貧困が固定化してきたことを説明してきた。もう一つ、大事なことがある。「セーフティネットの危機」だ。

セーフティネットとは、もともとサーカスで綱渡りをする芸人の綱の下に広げられたネットのことだ。綱渡りに失敗して転落しても、ケガをしたり命を落としたりすることを防ぐためにある。

社会における「セーフティネット」とは、人が万一ケガや病気をしたり、会社が倒産したり、クビになったときなどに、生活の保障をしてくれる社会の仕組みだ。

日本国憲法 25条には

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

と書かれている。これが社会のセーフティネットの根拠だ。

セーフティネットの種類

生活保護

仕事がなくなって、努力をしても仕事が見つからない、病気などで仕事ができない人に一定の生活費を給付する制度。

雇用のセーフティネット

公共職業安定所(ハローワーク) 仕事のない人に無料で仕事をあっせん、紹介する

雇用保険 失業者に対して求職活動をする間の生活のための給付金を支給する制度

職業訓練 労働者に対し、職業に必要な技能や知識を習得させる制度

職業訓練期間中の生活保障給付

広い意味でのセーフティネット

これ以外に、公的保険(健康保険)も人が安心して生きるためのセーフティネットだと言えよう。

また、子供を持った女性が仕事をするために子供を預ける保育所、託児施設などもセーフティネットと言える。

 

地域コミュニティそのものがセーフティネット

そしてもっと広い意味では、昔は地域コミュニティそのものがセーフティネットだった。

家族、親戚、昔からの顔見知りがずっと一緒に生活している田舎では、どこかの家で病気になる人がいれば、親戚や近所の人が、子供や配偶者の面倒を見、経済的にもバックアップをした。失業した人は「うちで働け」と仕事をあっせんした。

赤ん坊も老人も、地域で面倒を見た。

昔の日本には、そういう目に見えないセーフティネットがあったのだ。

次々と失われるセーフティネット

しかし、今の日本では、すべてのセーフティネットが今後続けることができるかどうか、難しくなっている。

まず、生活保護受給者は、終戦直後200万人だったが、経済発展とともに減少し続け、1990年には80万人まで減った。しかしそれからわずか25年で史上最高の220万人になろうとしている。総額は4兆円を超えた。
生活保護費は国と地方が負担しているが、税金の収入が減少し続けている地方では、財政を圧迫している。審査は厳しくなり、地方では、生活保護を申請してもなかなか受給できない状況になっている。

雇用のセーフティネットも厳しくなっている。

公共職業安定所(ハローワーク)は今も積極的に仕事のあっせんをしているが、求人の多くが非正規雇用であったり、期間を限った雇用だったりするなど、仕事を求める人とのニーズが合わなくなっている。

そのために、失業してから再就職するまでの期間が長くなり、雇用保険に入っていても失業保険では間に合わなくなっている。

さらに高齢化とともに、国の医療費の負担が増えて、健康保険も厳しい状況になっている。

保育所、託児施設なども絶対数が足りないために、子供預けて働きに出ることができない母親が増えている。

そして、地方から都市圏に人々が移り住んだために、地域のコミュニティもほとんど消滅してしまった。

都会では、病気などで働けなくなった人も、失業した人も、誰に頼ることもできない。面倒を見てくれる家族や親せきもいないことが多い。

そして地元に戻っても、世話をしてくれる人がいなくなっている場合が多い。

こういう形でセーフティネットが、すべて存続の危機を迎えたために、仕事を失った人は、誰の手助けも受けることができず、最悪の場合、ホームレスになる場合もある。

現代の「貧困」が深刻なのはこのためだ。

 

 

Crick

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