定時制高校って、どんな学校? その1
ナビ部アラカルト
2016/10/29
もう一つの高校 その9
日本は二重の意味での「学歴社会」であることを説明した。
エリート大学を出て、大企業に入社したり、キャリアの国家公務員になるようなケースも「学歴社会」の一面だが、正社員になるため、就職を有利にするために、中卒ではなく、高卒の資格を取ろうとするのも「学歴社会」の一面だと言えるだろう。
定時制高校に通う4つの理由
定時制課程は、主として夜間などに授業を行うことを言う。高校の課程で、定時制がある学校のことを定時制高校という。
定時制高校に通う理由としては、主として以下のものがある
- 経済的理由で昼間の高校に通えず、仕事やアルバイトをしている
- 成績不振や、不登校などで、昼間の高校に合格できなかった
- 経済的理由や諸事情で、高校に通わないまま社会人になった(高齢者含む)
- 障害があるため、昼間の高校から受け入れを断られた
いずれの理由で通う人も「せめて高校卒業の資格は得ておきたい」と本人や、親、家族が希望して、定時制高校に通っている。
かつては4つの理由のうち、3の理由の人が多かった。戦後の混乱期に学校に行けなかったお年寄りなどが定時制高校に通っていたのだ。高度経済成長とともに、そういう人が減って、定時制高校は減少したが、近年、1、2の理由の人が増えて、定時制高校の需要は高まりつつある。
言い換えれば「貧困」の進展とともに、定時制高校は新しい役割を果たしつつあるのだ。
学歴差別?学力差別?
繰り返しになるが、現代では、94%の人が「高卒以上」の学歴を持っている。履歴書に「中卒」と書くことで、就職は極めて難しくなるのだ。
日本国憲法第十四条は
第十四条
1 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
と書かれている。学歴によって差別されることもあってはならないのだが、実際には「中卒」の学歴は、経済的、社会的に、大きなハンデキャップとなっている。これは日本だけでなく、先進国ではほぼ同様だ。
先進国では、多くの人々は肉体労働ではなく、デスクワークに就く。書類をかいたり、伝票のやり取りをしたり、報告書を上げたり。そういう仕事をする際には、高卒程度の「学力」が必要になってくる。
そういう意味では「学歴」の差別ではなく「学力」の差別だということも言えよう。
実際には定時制高校に通う生徒の多くは、実際は中学校の学び直しを目指すことも多い。学力が低いと、社会生活を送るうえで、支障をきたす場合もある。
定時制高校には「学歴」を得るとともに、「学力」も身に着けるために通うのだ。
授業時間は4時間程度
定時制高校は夜間に開講される場合が多いが、生徒の働き方に合わせて朝、昼、夜間の3部制の高校もある。
授業時間は、一般の高校(全日制高校)よりも短い場合が多い。ふつうは4時間だ。働いている時間が長いこと、疲れている生徒が多いことなどに配慮している。
公立高校の中には、全日制高校と定時制高校を併設している場合もある。
「ナビ部」で紹介した大阪市立都島工業高校は、定時制の大阪市立第二都島工業高校と同じ敷地にあり、教室や学校の施設を共有している。しかし、生徒の間の交流はあまりないようだ。
公立高校だけでなく、私立高校にも定時制を設置している学校もある。
定時制高校は、全日制の高校に通う皆さんの知らない「もう一つの高校」といえるだろう。次回は、もう少し詳しく紹介する。
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