友達に本心を言えるようになって 逃げることをやめた私の成長ストーリー 埼玉県立戸田翔陽高等学校 西牧昭美さん

注目! 素敵な人、すごい部活!

2019/02/27

平成30年度 第66回全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会で 埼玉県代表 西牧昭美さんがネグロス電工賞受賞

埼玉県立戸田翔陽高等学校4年生の西牧昭美さんは、26歳の時に定時制・単位制・総合学科の高校に入学した。年齢差のある同級生との怒涛のような出来事に戸惑い、意見を戦わして、やがて自分も変わっていく。体験発表会では学校で起こった様々な出来事を豊かな表現力で語り、11月24日開催された全国大会で、「ネグロス電工賞」を受賞した。
積極的で姐御肌に見えても、実は内気で臆病なんだと自分を分析する西牧さんに話を聞いた。

体験発表大会は自分を振り返るいいチャンスだった

—定時制高校生活の出来事を全国の皆さんの前で発表して大きな共感を呼びましたが、今のご感想は?

私は自分の内面と人から見られる外面に大きなギャップがあるんです。話していると「明るくていいね」と言われることが多いのですけれど、実はすごく内向的で、人前で緊張する性格です。6月に「体験発表会があるのだけれど、出てみない?」と木村美貴先生に誘われて、チャンスをいただいたのですが、全国大会が終わって一番感じたのは「私ってこんなにしゃべれたのだ」ということでした。10月の埼玉県大会では足が震えて何を話したかわからなかったのですが、15名のトップになりました。県代表になって全国大会に出場して自分が話すのは怖いと思うと同時に、どんな人がどんな話をするのか、ワクワクする自分もいました。全国大会では68歳の人もいましたが、ほとんどは10代の人でした。

平成30年度第66回全国高等学校定時制通信制生徒生活体験発表大会 会場:六本木ヒルズ・ハリウッドプラザ。全国から各都道府県や地区の予選を勝ち抜いた58名が登壇し、学校生活の体験を発表した。

全国大会では「臆病者の学校奮闘記」という題名で堂々と発表した。

—26歳で学校に入学して、同級生より年上ということを常に意識して私がやらなければと思ったり、邪魔しないようにとブレーキをかけたりしたとおっしゃいましたね。その心の動きから学園ドラマを連想しました。

出場にあたっては規定時間の7分間で何を話せるか、どうまとめたらいいのかわからないので、国語科の木村美貴先生に2時間ずつ3日間にわたってしゃべりました。しゃべりながらいろいろなことを思い出して、それを作文にまとめることができました。スピーチ方法は演劇部の品田歩先生にアドバイスをしていただきました。ただただ、私の思いが伝わってほしいとだけ思って発表しました。学校生活では前だけを見てがむしゃらに行動して、当たっては砕け、当たっては砕けの連続でした。今になってその積み重ねでずいぶん成長したんだと感じています。

何歳になっても学校に行ける!

—中学校で辛い思いをして学校が怖くなって、高校には行かなかったのですね。

私は部活でバスケットボールをやっていたのですが、挫折し、いじめにあって、学校が嫌になってしまいました。母子家庭で懸命に働いている親には何の相談もできなかった。バスケをやりたくて、強豪校の私立中学にいかせてもらったのだから頑張らなければというプレッシャーに負けてしまったのです。練習が厳しくて部活を何度も辞めようと思ったかわからなかった。自分がいっぱいいっぱいで何も考えられなくなったんです。ほぼ3年間がそんな状態でした。学校がつまらなかった。友達も、勉強も何もできなくて、自分に対して絶望していました。自分自身が一番嫌いだった。自分に絶望して無力感を持つだけでした。3年になって母親に初めて打ち明けたら、「辞めれば」と言われて、やっとホッとしました。それが人生の分岐点だったと思っています。

あのまま頑張れと言われていたら、この戸田翔陽高校にも来ていないし、こんなにまっすぐ前を向いていられなかったでしょう。高校に行かないことになったら精神的に楽になって、それで2カ月くらい引きこもりをしていました。ある日、いつも行っていたスーパーの人が「時間があるなら働く?」と言ってくれたので、そのスーパーで働き始めたのです。

—外に出るきっかけができてよかったですね。やっと解放された時だから、将来の目標などはすぐには無理でしょうが、少し時間をおいてからどんな風になりたいな、などと考えたのですか?

私は自分を認めることが下手くそです。もっとやらなくてはという気持ちをいつも持ってしまうのですね。目標というか、比べる人はいつも母親でした。親に対してコンプレックスを持ってしまうのです。最高点が親でそれ以上でないとダメだと思っていました。母親は運動も、料理もなんでもできる。仕事もしているし、一緒にいて勝てたことがない。親を超えたいという気持ちがあったのかもしれません。母親以上の人はいないと思っていました。ただ母の悪いところは反面教師でこうならないようにしようと思いましたけれど。

—母親冥利に尽きますが、お母さんは目標にされていることを知っていたのですか?

この間初めて、母親を目標にしていたと話したら、びっくりしていました。そんな風に思われていると思っていなかったみたい。姉妹みたいで、ふざけるし、周りから見たら仲良し親子に見えますが、私の本心は誰にもわからないと思います。困ったこととかも相談はしませんでした。いつも自分の本心とは違うことを言っていました。どうせ、受け入れてくれないと思っていましたから。「ああしろ、こうしろ」「それは違うわよ」って言われるに決まっていましたから。

—中学を卒業して11年間、ずっとアルバイトをしていたのですか?

スーパーマーケットで5年半と医療・介護施設では正社員として働いていました。

病院では看護助手として働きました。精神科だったので、患者さんの一人一人の対応が違って勉強になりました。食事や排泄の介助やシーツ替えとかケアが主な仕事でした。入院患者さんもいて夜勤もやっていました。その時、准看護師試験を受けるために高校に行きたいと思って病院に相談したのですが、ほどなく同じ法人の障害者施設に異動になりました。そこでは生活方法がわからなくなってしまった方の日常生活に寄り添い、行動を共にしました。暮らしとはこんなことの積み重ねでできているのだとか、どんな人でも病気になってしまうことがあるという現実を知りました。

仕事で学校のことが棚上げになっていたある時、テレビを見ていると、84歳の女性が定時制高校に行っていて「学校生活が楽しい。体育は大変だけど」とテレビで言っているのを見て釘付けになりました。いくつになっても学校に行けるということをその時に気がつきました。勇気をもらったというか、ホッとしたというか、具体的に高校に行くことを決めました。私にとってはジャストタイミングでした。

そして、学校見学時に見た授業の様子も印象的でした。生徒たちが楽しそうに授業を受けている様子が、中学時代のいじめと親からの重圧で迷子になり焦っていた私の背中を押してくれました。

「同級生の邪魔にならないように」と心に決めて

—仕事を続けながらですね。入学してからはどうでしたか?

入学式では恐怖感しかなくて、周りを見ると同級生は15、16歳でみんな年下ばかり。

「どうしよう、どうしよう」と怖くてパニックになりました。Ⅲ部(夜間部)は80人、「ここにいていいのかな」「26歳の自分は異質なんだ」「みんなの邪魔をしてはいけない」と思っていました。隣の人と話してみると、隣の人も緊張していたので、みんな同じなんだと思いましたが、その後、話をしているとついていけない部分はありました。「そう思うのね、そういうところはみんな子どもなんだ」と、1学期くらいまでは友だちと一緒にいるけれど、ひたすら邪魔してはいけないと思って、自分と見解が違っていても、特に意見を言うこともなく黙っていました。また、行事などの時は、自分がやらなければ周りの人はできるはずないと、見下した考えをして何も言わずに自分だけで進めてしまうことがありました。

—体育祭での友だちの一言が自分を見つめるキッカケになったそうですが。

体育祭の時のことです。私は体育委員だったのですが、当日欠席の人が出たらはクラスのメンバーでカバーするのですが、プログラムに参加したくない人がたくさんいて、「私がなんとかしなければ」とパニックに陥っていました。同級生が「手伝おうか」と言ってくれても「大丈夫、大丈夫!」と言って、聞く耳を持たなかった。年上だということで一人で空回りしていましたが、友だちが「お前一人で頑張らなくていいんだ」と怒ってくれました。頭をガンと打たれたように感じました。自分では思ってもみなかったことで、みんなは私のためを思って怒ってくれるんだとはっとしました。そこから周りが見えるようになっていきました。

クラスの「お母さん」から「お姉さん」になった!

—行事や出来事があるたびに、友だちとの距離が縮まっていきますね。

本当に毎学年ごとに事件がありました。2年生の時は「文化祭」がありましたし、3年生の時はたくさん喧嘩をしてぶつかりました。入学したばかりの頃は自分の中で言葉を飲み込んでばかりいたのですが、だんだん私も変わってきました。「こいつらは本当のことを言っても私を嫌いにならない」と思えたので、率直なことばが出てきて、距離を置くことはなくなりました。そんなことが重なっていくと、入学した時は、クラスで「お母さん」と呼ばれていたのですが、いつの間にか、「お姉さん」と呼ばれるようになってきました。お姉さんと呼ばれるのはうれしいのですが、私自身はまだ、同級生を「うちの娘は」とか「うちの息子は」って言い方をしているんですけど(笑)。

それと、みんなは私に容赦しないでズケズケ言ってくれますが、今は私も容赦はしないでぶつかれます。教室がうるさいと、違う学年の子にも「うるさいよ!」と言ったりできます。学校に来たおかけで、こんなに素直になれたし、私を思ってくれる友達もできた!だから、今の自分が好きになりました。でも「人と接するのが怖い」という自分もまだいるのですけれど。

—今回、体験発表をご指導していただいた先生の感想は?

発表する際の原稿の指導をしました。エピソードがたくさんあって、そのたびごとに西牧さんが何かをきちんと感じているので、それを思い出してよくまとめたと思っています。その時を思い出して、話すときは涙が出そうといっていました。真摯に心に刻んだ感動なので、聞いてくださる皆さんにもよく伝わったと思っています。(木村美貴先生)

演劇部顧問なのでプレゼンテーションの指導という役割でしたが、西牧さんは話し方、表現の仕方がすごく上手です。プレゼンだけでなく、普通に話していても耳を傾けたくなる話し方です。何より、いろいろなことを乗り越えた笑顔がとても素敵だと感じています。(品田歩先生)

—4年間は長いようで短いかもしれませんが、卒業を控えての西牧さんの感想は?

担任の鈴木先生がいつも後ろについていてくれると思っていたので、安心して学校生活を送ることができました。具体的に何かを言ってくれるわけではなかったのですが、いつもどこかにその眼差しを感じていました。クラスをまとめる役割も任せてもらえたので、人とも深く関わることができて、自分でもびっくりするほど成長できました。居心地のいい学校生活で、卒業したくないです。

それから、私の目標は一人暮らしをすることです。近すぎる母との距離をお互いに見直すため、自分だけの時間を作るために実現したいと思っています。伝統ある和食店に就職することになっています。魚を捌けるようになりたいと思います。

—担任の鈴木太郎先生、西牧さんは変わりましたか?

一言で言えば、成長ぶりがすごいですね。入学前は事情を聞いていたのもあり、一番心配していたのですが、杞憂に終わりました。何か行事や出来事があるたびに西牧さんは積極的に行動し、真摯に自分や相手に向き合ってきているので、4年間でこんなに成長したのだと思います。クラスのまとめ役として、女子も男子も、よく西牧さんの言うことを聞いていました。人望もありますが、迫力があって怖いからかもしれませんけど(笑)。あっという間の4年間だったと話していたところです。

自分でも言っていますが、卒業をしたら経済的に自立をめざしてほしいとも思っています。

—最後に西牧さんから皆さんに伝えることはありますか?

「いろいろなことに怖がらないのでやってみて」と言いたいです。怖がりの私でもできたことがたくさんあった。目の前のことにぶつかってみると意外と簡単にできる。みんな優しいから、ちょっとだけ前を見て逃げないで、と伝えたいです。

最後に、西牧さんははにかみながらリュックサックをくるりと見せてくれた、可愛いマスコットが女子高生そのものだ

埼玉県立戸田翔陽高等学校

★教育目標
基礎的な知識・技能の習得を基本に、主体的に取り組む意欲、多様性を尊重する態度、他者と協働するための資質・能力を身につけた「人財」の育成を目指している学校です。

2005年(平成17年)に、埼玉県立戸田高等学校全日制、埼玉県立浦和商業高等学校定時制、埼玉県立与野高等学校定時制、埼玉県立蕨高等学校定時制を合併し、埼玉県立戸田翔陽高等学校として生まれ変わって15年。午前部・昼間部・夜間部の3部制の埼玉県内唯一のシステムを採用しています。広い敷地、充実した施設環境、柔軟な学びができるこの学校で、生徒たちはいろいろなことに主体的に取り組もうとしています。
★昼夜開講の3部制
午前部、午後部、夜間部の3部からなり、自分の時間帯を選ぶ以外に他の時間帯の
授業を積極的に選択すれば、74単位以上の修得で3年間で卒業できる。
★ 総合学科
普通科と専門学科(福祉・ビジネス・国際教養・自然科学・自由選択)科目を
選択できる、いいとこ取りのシステム。
★カウンセリング機能
正面玄関を入ってすぐのところにあるのが、「カウンセリングルーム」(教育相談室)。
気軽に相談できるように入りやすい場所に設置してあり、月曜日から金曜日まで、予約すればいつでも相談に乗ってくれる。生徒自身はもちろん、保護者からの相談も受けてくれる。カウンセリングルームには教育相談員が2人、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが各1人常駐。予約制で1回45分。
★ 充実の施設・設備
コンピユーター室、介護実習室、陶芸室、自習室、ラウンジなどがある。
★ 生徒は制服を着用し、礼儀正しく、明るい生徒で来校者への挨拶も気持ちいい。
★ 部活動は様々な運動部、文化部、同好会があり、全国大会でも活躍している。
部員、顧問が揃いにくい時間的な制約を工夫と集中力で乗り越えている。

住所:埼玉県戸田市新曽1093
TEL:048-442-4963
HP:http://www.shoyo-h.spec.ed.jp/

元気な部活応援!コンパスナビTV
2016年4月~2017年3月に放送された「コンパスナビTV」の動画や取材記事は、こちらでご覧いただけます。
サッカー ナビ部 全国高校 サッカー部ポータルサイト
吹奏楽 ナビ部 全国高校 吹奏楽部ポータルサイト
野球 ナビ部 全国高校 野球部ポータルサイト
主役はみなさん!ナビ部に出よう!
一般社団法人 青少年自助j率支援機構 コンパスナビ