もう“好きなスポーツだけやっていればいい”ではない。バレーボールで生きていくのは大変だ!

THE VOICE

2016/09/02

堺ブレイザーズ 田中幹保さん インタビュー その4

トッププレイヤー、指導者として道を究めた堺ブレイザーズ取締役相談役 管理部長の田中幹保さんの言葉。世の中の変化によって、企業スポーツも大きく変わりつつある。

アメリカの練習砲を取り入れたが・・・

帰国後、田中さんは全日本ジュニアの監督になり、アメリカの練習法を取り入れた。

 

「日本の場合、バレーボールはアップして、対人してレシーブして、スパイクしてという基本的な流れがある。このスタイルは中学、高校からトップまで変わらないんです。

アメリカではコーチが“30分後にAB戦するから、体作っといてね”と言う感じ。

日本人選手も最初は面白がるけど、勝手が違うから、だんだん最初からやってください、と言う風になるんです。

また、海外の練習は目的を理解しないと効果発揮しない。だから“これはこういうためにやるんだよ”と説明するんだけど、理解する選手は少なかった。

日本の選手は名門高校出身が多く、先生に言われて深く考えることなく“はい、はい”とやることに慣れてしまっている。自ら考え自ら行動することに慣れていないから、練習の目的を理解せずにやる。その結果、効果が半減してしまう。それは今でも感じます。

上位下達の指導方法は簡単だし、成果も短期間に現れやすいが、子供たちに考える癖をつけさせないと世界との差は開くばかりです。スポーツをやる意味も半減すると思います。私はバレーを通して無形の財産を多く獲得しました。それが、人生を生きていくうえでの大切な財産となっています。バレーと真摯に向き合い、悩み、考え、失敗や成功の体験から得たものなのです。子供の成長の為にも「考える」環境を作ってやってほしいですね。先生の我慢が必要になってきますが…」

 

 

企業スポーツが大きく変わる中で

 

世の中の変化によって、企業スポーツも大きく変わりつつある。

実業団チームによるバレーボールの最高峰、日本リーグは、Vリーグ、Vプレミアリーグと変わった。

そして、バレーボールの名門、新日鐵も、2000年に堺ブレイザーズと名前が変わった。名前が変わっただけでなく、堺ブレイザーズは、新日鐵(のちに住友金属を吸収合併して新日鐵住金)の子会社となり、大阪府堺市を本拠として総合スポーツクラブとしてスタートすることになった。

「バレーボールで生きていく」環境は、大きく変化したのだ。

 

「企業スポーツは、どんどんつぶれる時代になりました。富士フィルム、NEC、日本鋼管などバレーの名門チームが消えていった。

新日鐵も潰されそうになったときに、私は全日本の監督をしていてチームを離れていましたが、当時の小田勝美副部長が“チームを潰すかどうか”と言うことを会社から突き付けられて、クラブチームで残すと決めたんです」

 

2004年、田中幹保さんは、堺ブレイザーズに副部長として復帰。

 

「帰ってきた瞬間から、昔の企業スポーツとは違うなと感じました。“好きなスポーツだけやっていればいい”ではないので正直やりにくさも感じますが、同時にこういう形態のスポーツもあってもいいのではないかと思いますね。苦しいと思わずに、面白いと思わないとやってられない(笑い)」

 

 

子どもたちにバレーボールを教えたい

 

今の堺ブレイザーズは、18人の選手の内、半分がプロ契約、残りは新日鐵住金の社員で堺ブレイザーズに出向している。

 

「社員の選手もバレーをやっている間は会社に行くことはありません。

この制度になったときから、プロ契約選手は新日鐵住金社員の選手をうらやましく思っているようです。反対に、社員の選手はプロ契約選手はいい給料もらってと思ったりしている。

毎年、予算とにらめっこしながらやりくりをしています。

こういう環境だから仕方がないですね。今も新日鐵住金の支援を頂きながら自分たちでも稼いで会社を運営しています。企業スポーツと違って大変なことも多いですが、やりがいは大いに感じています」

 

最近、頻繁に起こっているスポーツ選手の不祥事は他人事ではないという。

 

「プロ野球選手、バドミントン選手の不祥事は、ショックでした。うちの選手は、他の企業スポーツと違って24時間バレーボールができる環境です。でも、今は合理的な練習が多いから1日2時間とか、二部練習しても4時間とかしか拘束しない。あとは彼らの自由な時間です。プライベートまで管理するわけではないし、どこ行ってもなにをしてもわからない。だから、選手はしっかり教育しないといけない。そういう事件を起こしたら、うちのようなチームは一発でアウトです」

 

3年前からは常務の肩書がついた。堺ブレイザーズを経営する立場に専念することになった。さらに今年の6月には取締役相談役 管理部長に。

 

「あと1年で身を引くつもりです。前日本代表のコーチをしていた中垣内祐一が帰ってきたので、彼を部長にして、1年間会社のことをいろいろ教えていきます。後継者ができたら身を引くのは、部長になった瞬間から望んできたことです。

全日本監督当時“バレーボールの競技人口を増やすには、全日本が強くならないと”とよく言われました。それもそうだろうが、サッカーのようなシステムを構築し底辺をもっとしっかりと築かないとだめだと痛感していました。

だから、ブレイザーズに戻ってバレーボール教室・小学生チームを作ることに意義を感じていました。

サッカーのシステムには及ばないが、バレーではそんなにやっているところはありません。

60歳も超えたので来年には田舎に帰って、バレーの底辺づくりをできる範囲でできるだけやろうと思っています。ようやく自分のやりたいことができるようになると思って楽しみにしています」

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Crick

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